負債の相続
父が亡くなりました。父は生前事業をしており、事業のために借り入れをしていました。その額は4000万円です。その事業は兄が引き継いで今も行っています。父には借り入れもありましたが、預貯金や不動産などの財産も有りました。
そこで、相続人である母、兄、私が協議して、事業に使用している不動産を取得する代わりに事業の借入金もすべて引き受ける、預貯金は母と私が受け取るというものでした。預貯金と不動産の価値を比較すると不動産の方がずっと高価値でしたが、兄が借入金も全て引き受けるということだったので、私はしぶしぶ承服しました。
ところが、先日、父の借入先の銀行から私宛に1000万円を支払うよう請求書が届きました。借入金の支払いは兄がすべて引き受けると協議しましたので、私は銀行に説明して請求を拒否してよいでしょうか。
弁護士の亀岡です。
銀行が遺産分割協議のうち、借り入れをお兄様がすべて引き受けるという点に同意してくれていたら拒否できますが、そうではない場合には、拒否できません。
遺産分割協議の対象はあくまでプラスの財産であり、負債は対象になりません。特に金銭債務は法定相続分で当然に相続します。これは、プラスの遺産により返済を期待していた債権者を保護するためと考えられています。もし、相続人間で借金の割合を変えることができれば、借金を一人に集約させて、他の財産は別の人が受け取るという方法を認めることになり、債権者にとっては債権回収不可に陥ってしまいます。逆に言うと、債権者が同意すれば可能です。