相続放棄の熟慮期間と相続放棄後の対応
父が亡くなりました。
父は個人事業主でしたが、晩年はずっと赤字だと言っていました。
父が亡くなったのは1年前ですが、父の死亡を知ったのはつい最近です。
できれば相続放棄したいのですか可能でしょうか。可能なら放棄さえすれば全く問題がないのでしょうか。
なお、父は、自宅とは別に事務所を借りていましたが、そこの賃料も滞納しているみたいです。
私は一人っ子で母はすでに他界しています。
弁護士の亀岡です。
結論から申し上げますと、放棄は可能です。
相続放棄の熟慮期間は、相続開始時からではなく相続開始を知ってからです。
従いまして、あなたがお父様の死亡をつい最近知ったのでしたら、相続放棄は可能です。
ところで、相続放棄さえしてしまえばそれで全て問題が解決するかというと必ずしもそうとは限りません。
民法940条1項には、「相続放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は・・・相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。」とあります。
他にも相続人がいるなら問題ありませんが、今回はあなたが唯一の相続人である場合は、義務を果たす必要がある場合があると考えられます。
従いまして、相続放棄後、後順位の相続人に相続財産を引き継ぐ必要があります。後順位の相続人がいない場合は、相続財産清算人の選任の検討も必要になる。
ただし、法律改正により、あなたが「現に占有して」いないのなら、その義務は果たす必要はないかと考えられます。