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遺産相続・遺言書の弁護士相談|吹田市のかめおか法律事務所

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相続の生前対策とは?

コラム

 

1.生前対策の種類

 

まず、主な生前対策の種類についてそれぞれ説明いたします。

 

(1)遺言書

 

生前対策として最もポピュラーなものは遺言書の作成です。
遺言書とは、財産を所有している人が、自分の死後に財産をどのように分けるのかという意思を示した書面のことを言います。遺言者の意思を尊重する制度ともいえます。
遺言書でできることは法定遺言事項と付言事項の2つに分けて考えることができます。
法定遺言事項とは、遺言書により強制的に法律的な効果が生じる事項のことをいい、民法などの法律によって定められています。

 

法定遺言事項は

①相続に関する事項

②財産処分に関する事項

③身分に関する事項

④遺言執行に関する事項

などがあります。

 

付言事項は、遺言者が遺言事項ではない事項について遺言者の認識や考えを記載したものとなります。
詳しくは当所の遺言書に関するコラムをご覧ください。
遺言書を作成することにより、ご自身の死後、相続人の協議を経ることなく、遺言書に従い、財産の移転が行われます。
遺言執行者を弁護士などの専門家に指定するとより円滑に財産の移転ができます。

 

(2)生前贈与

 

次に生前贈与についてお話いたします。
生前贈与とは、贈与者の存命中に特定の贈与者の財産を贈与することを言います。
遺言書を作成した場合でも確実に特定の財産を特定の方に相続・遺贈されるとは限りません。そこで、ご自身が元気なうちに予め特定の財産を特定の方に贈与すれば、確実に財産を移転することができます。
ただし、生前贈与は、うまく活用すれば税金の優遇を受けることができる一方で、贈与の方法を誤ると相続時よりも税金が高くなるという場合もあるため、ご注意ください。
一般的に言われている税の優遇は、暦年課税制度の活用、配偶者控除特例の活用、直系尊属からの教育資金や住宅取得等の資金に関する特例や非課税措置の活用、相続時精算課税制度の活用などがあります。
実際に生前贈与する場合には弁護士だけでなく生前対策に精通している税理士も併せてご相談ください。

 

(3)任意後見制度

 

ご自身に後見人が必要になった時の対策として任意後見制度があります。
任意後見制度とは、ご本人の判断能力がある段階で任意後見受任者を選任し、将来ご本人の判断能力が低下した段階での任意後見事務内容を決め、任意後見契約を締結し、将来本人の判断能力が低下した時点で契約の効果を発生させる制度です。
成年後見制度との違いですが、成年後見制度がご自身の判断能力が低下したときにはじめて利用できる制度であることに対して、任意後見制度は、ご自身が判断能力のあるときに利用する制度です。
また、成年後見制度は後見内容が法律で定められていることに対して、任意後見制度は当事者間で後見内容を細かく決めることができます。
さらに成年後見制度の場合、ご自身の希望する後見人が選任されるとは限らないことに対して、任意後見制度はご自身があらかじめ後見人になってほしい方と契約しますので、候補者が亡くなるなどの特殊な事情がない限り、希望通り、後見人になってもらうことができます。

 

(4)生命保険

 

他にも生命保険を活用した生前対策も有ります。
生命保険の場合、受取人を特定の方に指定した場合、保険金請求権は相続財産にはならず、指定された方固有の権利となります。
そのため、原則として遺産分割協議を経ることなく取得することができます。
ただし、保険金がその他の遺産と比較して極端に多い場合には特別受益と同様の扱いに修正されることも有りますのでご注意ください。
他にも、相続の際の死亡保険金が一定の金額まで非課税となる場合も有り、節税対策につながることも有ります。
生命保険は納税資金対策、二次相続対策、遺産分割対策など様々な場面で活用できます。

 

(5)家族信託

 

最近では家族信託という生前対策も有ります。
家族信託とは、民事信託の一種で、財産を所有する方が、特定の目的に従い、所有する不動産や預貯金などの資産を信頼できるご家族に託してその方に管理や処分を任せるシステムのことを言います。
財産の管理者処分方法を信頼できる一人に集約させつつ、利益を複数名に分散させるなど財産管理や処分方法について自由に設定することができます。
契約内容や税金の問題など高度な内容となるため、お考えの方はまずは専門家にご相談ください。

 

(6)死後事務委任契約

 

葬儀などお亡くなりになった後の事務処理を任せる方法として死後事務委任契約があります。
死後事務委任契約とは委任者が受任者との間で事故の死後の事務を生前に委任する契約のことを言います。
遺言に定めても法的効果のない事項やそもそも遺言になじまない事項でも契約にすることで、ご自身の希望通りの方法を指定することもできます。

 

(7)事業承継

 

会社を経営している方は、事業承継についても対策をする必要があります。
ご自身がオーナー社長の場合、ご自身の保有する株式を後継者に承継させるための方法を探る必要があります。その方法として生前贈与を行うか、その際の税金はどれくらいになるのかなどを十分に検討する必要があります。
一方、対策しなかったことによる弊害も大きく、必要性はかなり高い対策となります。

 

(8)養子縁組

 

養子縁組を活用するという方法も有ります。
養子縁組をすることにより、相続税の計算の際、基礎控除額が増える、生命保険金や死亡退職金の非課税枠が増える、相続人に適用される税率が下がるというメリットがあります。
ただし、節税のための養子の人数は制限があり、方法によってはかえって税率が上がることもあり、どのように活用するかは専門家にご相談ください。

 

(9)納税資金対策

 

最後に、相続税の納税資金対策ということも重要になります。
預貯金や現金と比べて不動産などにすぐにお金に変えることが難しい財産については、相続税の申告及び支払いまでにお金に変えることができないリスクがあります。
特に不動産価格があまりにも高額であるために買い手が限られるという不動産のお持ちの方は、予め対策を講じる必要があります。

 

 

2.生前対策の必要性とメリット

 

次に生前対策の必要性とメリットについてお話いたします。
もし、何も対策をしなかった場合に起こりうる事態をお話しします。
遺言や生前贈与、生命保険など財産をどのように移転させるかという対策をしなかった場合、あなたの財産は、各相続人が法定相続分に基づいて取得します。遺産分割協議がなかなか成立しなかったり、相続人が連絡を絶っていたりしたことで協議ができないという事態が考えられます。また、独身の方できょうだいがおられない方はその相続財産の扱いが大変複雑になります。このように財産が宙に浮いてしまい、簡単には誰も処分できないという事態に陥ります。
任意後見制度を利用しなかった場合、あなたの意思能力が低下した際、成年後見人を選任する必要が生じた場合でも、あなたの望んでいない方が後見人になることや望んでいる通りに後見人が任務を遂行するとは限りません。
死後事務委任契約をしなかったことにより、ご自身の葬儀などが望んでいる通りにできないだけでなく、そもそも葬儀ができないという事態もあり得ます。特に相続人のおられない方の場合には、ご自身の死後、誰も手続きを取ることができないという事態もあり得ます。
事業承継についても、株式について何等対策していなかった場合、事業に何ら関与していなかった相続人までもが株式を保有し、事業の継続に支障が出るということもありますし、他の相続人から、株式の買い取りの際に、高額を提示されるということも十分あり得ます。
処分し辛い高額の不動産を所有していた場合に、相続税の申告期限まで処分が間に合わずに、相続人が自分の財産から相続税を支払うしかないという事態もあり得ます。
このように、対策をしなかったことで相続人や後に残された方たちに苦労を掛けてしまうということは少なくありません。

 

 

3.生前対策の成功事例

 

反対に、対策をしたことにより、相続人や後に残された方が円滑に財産を取得したり、相続税の申告をしたり、事業を継続できたというケースがあり、生前対策を行ったことにより成功した事例をいくつか紹介いたします。

 

(1)遺言書を作成

 

AさんにはBさんと言う配偶者がおり、子供はいませんでした。Aさんには不仲のきょうだいCがいました。Aさんのご両親は他界しています。Aさんには自宅不動産とわずかな預貯金しかありませんでした。
Aさんは、自分が死亡した場合にはBさんにすべて自分の財産が行くと思っていましたが、弁護士に相談したところ、Aさんの相続人はBさんだけでなくCさんも入ると聞かされました。そこで、Aさんは自分の財産は全てBさんに相続させる旨の遺言を作成しました。
Aさんの死後、BさんはAさんの遺言書をもって自宅や預貯金を受け取る手続きを行いました。
もし、Aさんが遺言書を作成しなかった場合には、CさんがAさんの財産の4分の1を取得することになり、Bさんは自宅を守るためにAさんの預貯金を手放すか、場合によってはBさんの財産から代償金を支払う必要がありました。

 

(2)生前贈与

 

Dさんには長年連れ添った10歳下のEさんと言う配偶者がおり、前配偶者との間の子供Fさんがいました。Dさんの自宅はDさん名義でした。Dさんにはほかにも収益物件なども有るのですが、FさんはEさんとの再婚については強く反対しており、Dさんは自分の死亡後、Eさんが確実に住むことができるか心配になり弁護士に相談しました。
そこで、DさんはEさんに対して、自宅を生前贈与することにしました。
Dさんの死亡後、Eさんは弁護士を通じてFさんと遺産分割協議をしましたが、Dさんには他に財産が多くあったことから、自宅については特に問題になることなく、協議が成立しました。
もし生前贈与がなければ悪感情を抱いているFさんと自宅について協議がまとまらなかったことも考えられます。

 

(3)死後事務委任契約

 

Gさんには相続人がおらず、Hさんという親友がいました。Gさんは自分には相続人がおらず、自分が死んだときの葬儀や賃貸物件の解約などをどうしたらよいか悩んでいました。Hさんは自分がすると言ってくれていましたが、葬儀社や大家さんが応じてくれるか心配になり、またHさんに財産を遺贈したいとも考えており弁護士に相談しました。
そこで、GさんはまずはHさんに自分の財産をすべて遺贈する旨の遺言を作成し、それに加えて、自分が死んだ後の処理をHさんにお願いするためにHさんとの間で死後事務委任契約を締結しました。
Gさんの死亡後、Hさんは死後事務委任契約に基づき、Gさんの葬儀を行い、賃貸物件の解約などの事務処理をしました。
もし、Gさんが死後事務委任契約を締結しなかったとしたら、葬儀が行われたかも不明ですし、賃貸物件の解約などの事務処理は出来なかった可能性が高いです。

 

(4)事業承継

 

Iさんは地元では有名な会社の創業者でした。Iさんは社長としてまだまだ現役でしたが、自分が死んだ後に会社がどうなるのか心配になりました。
Iさんには妻であるJさんとの間にKさん、Lさん、Mさんがいました。IさんはKさんに次期社長として期待する一方、Lさんとは喧嘩別れをして絶縁状態であること、Mさんは浪費家で家業を手伝うことをしないのに何度もお金を貸してほしいと言ってくるため、できるだけLさんとMさんには相続させたくないと考えていました。
そこで、Iさんが弁護士に相談し、少なくとも会社の株式だけはすべてLさんが取得できるように生前贈与を行いました。また、それ以外には遺言書を作成するなどして、できるだけKさんにIさんの財産を集約させるようにしました。
Iさんの死亡後、Kさんは滞りなく会社の経営を継続して、よりよい会社に成長させました。
もし、Iさんが何も対策をしていなければ、会社の株式は相続財産として相続人全員の共有となります。Lさんは絶縁状態ですので、連絡が取れないという問題が生じますし、Mさんは会社の経営に興味がなく、Iさんの遺産をいかに多く取得するかしか考えてないでしょうから、会社の経営に支障が出ることは明らかです。

 

(5)相続税の納税資金対策

 

Nさんは自宅不動産のほかにビルを1棟保有していました。普段の生活費はビルの賃料でした。Nさんには配偶者のOさん、子供のPさんQさんがいました。家族の関係は良好でしたが、家族からビルを手放してほしいと言われることについては絶対に拒否していました。Nさんはビルにはかなり価値があること、売ろうと思えばすぐに売れると考えていましたが、知り合いの不動産業者に聞いたところ、この地域でビル1棟を売却しようとしてもなかなか買い手がつかない、いい値段で売りたいなら1年はかかると言われました。そこで、Nさんは決意し、知り合いの不動産業者に売却を依頼しました。すぐに買いたいという人は現れましたが、値切られることばかりされ、納得できる金額で売れたのは、依頼をしてからちょうど1年後でした。
Nさんは売却を見届けてから死亡し、Oさんたちは無事に相続税の申告をし、納税できました。
もし、Nさんが貸しビルを売却しなかった場合、相続税の申告の際に、納税資金が用意できないことを避けるために安値で貸ビルを売却しなければならなくなったかもしれませんし、自分の財産や、最悪自宅を売却して相続税を支払う必要があったかもしれません。

 

 

4.まとめ

 

このように、生前対策と言っても様々な方法があり、お一人お一人に合った対策が必要です。そして、対策をしなかったことによる弊害も多くあり、まずは、ご自身に生前対策が必要か、必要だとしてどのような方法を採るべきかをご検討いただく必要があり、専門家の助言が必要となりますので、まずはご相談ください。
そして、その相談するタイミングですが、お元気なうちにご相談いただきたいと思います。

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