【用語解説】 遺留分の放棄
遺留分の放棄とは、法律で認められた最低限の相続分である遺留分を有する相続人が、その権利を自ら放棄することを指します。
遺留分は、被相続人が特定の相続人や第三者に多くの財産を譲渡した場合でも、一定の相続人が最低限の遺産を受け取れるようにするための制度ですが、相続人自身の意思でこの権利を放棄することも可能です。
遺留分の放棄を行うことで、被相続人は自身の財産をより自由に処分できるようになり、例えば事業承継の際に特定の相続人に集中して財産を引き継がせる場合などに有効となることがあります。
特に、会社の経営者が後継者に円滑に事業を引き継ぐためには、他の相続人が遺留分を請求しないことが望ましいため、生前に遺留分の放棄を求めるケースが少なくありません。
また、被相続人が配偶者に多くの財産を残したいと考えた場合や、特定の相続人の支援を手厚くしたい場合にも、他の相続人に遺留分の放棄をお願いすることがあります。
ただし、遺留分の放棄をすることには慎重な判断が求められます。
一度放棄すると、後から撤回することは原則として認められないため、将来的に財産状況や生活環境が変化した際に不利益を被る可能性があるからです。
そのため、遺留分の放棄を考える際には、十分な情報を得た上で判断し、必要に応じて弁護士や司法書士などの専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
また、相続人の中には、他の相続人や被相続人からの圧力によってやむを得ず放棄を選択するケースもあるため、裁判所が生前の放棄について慎重に審査するのは、このような不当な影響を排除する目的もあります。
遺留分の放棄は、相続全体のバランスを考慮した上で行われるべきものであり、単なる個人的な事情や一時的な感情によって決定するものではありません。
放棄を選択することで得られるメリットもあれば、不測の事態に備えた財産を確保できなくなるというデメリットも存在するため、長期的な視点で慎重に検討することが重要です。
このように、遺留分の放棄は相続の自由度を高める一方で、慎重な判断が求められる制度であると言えます。