ホームロイヤー契約とは?

今回はホームロイヤーについてお話いたします。
1. ホームロイヤー契約とはどのような制度かについて
そもそも、ホームロイヤーとは何かについて、お話いたします。
日本弁護士連合会の紹介によると、誰にも気兼ねなく、最後まで豊かに自分らしい生き方を全うしたいという方のために、暮らしと財産を守るプロフェッショナルとして、希望に沿った総合的な法的支援を行う弁護士のことを言います。
例えるならば、かかりつけのお医者さんのように、かかりつけの弁護士を用意するということです。
問題が起きるたびに、毎回違う弁護士に相談するより、いつも相談する弁護士に相談することで、あなたの生活状況やお気持ちに寄り添ったアドバイスを受けることができます。
ホームロイヤー契約は、その人に適した契約内容になっており、日々の相談だけという場合も有れば、財産管理と言ったものまで多種多様となっております。
これから、それぞれの契約内容について説明いたします。
2.ホームロイヤー契約の内容について
2-1.見守り契約
見守り契約は、継続的に弁護士が契約者あるいは見守りの対象となった方に対して、一定期間、例えば1か月に一回、定期的に連絡を取るというものです。連絡方法は契約によって定められます。
見守り契約とともに任意後見契約をすることもあり、弁護士が見守りを履行しながら、家庭裁判所に任意後見監督人の選任をするか否かを判断するというものもあります。
ご自身に何かあった時の対処のためであったり、遠く離れて暮らしているご家族が、高齢のご両親のために見守り契約をすることになります。
2-2.法律相談
何かあった時にその都度弁護士を探して相談するということもできますが、あなたのことを知らない弁護士に一から説明することはかなり面倒なことです。
いつも気軽に相談する弁護士がいればいい、このようなニーズから生まれたのが顧問契約です。
顧問契約の内容は、例えば1か月あたり〇時間までは顧問料で賄う、それ以上の場合は追加料金が発生するという内容が一般的です。
見守り契約と合わせて行うことが多いのではないでしょうか。
2-3.財産管理委託契約
財産管理委託契約とは、本人の判断能力には問題ないが、高齢で一人暮らしであったり、病気などで本人の身体や健康状態が不安になったときに、日常的な金銭管理や不動産の管理などを受任者に委任する任意代理契約のことを言います。
具体的な管理方法は、ご本人の状況などにより大きく異なるため、個別具体的な契約を締結することになります。
例えば、預貯金の場合、通帳や印鑑などを受任者が管理し、各支払いを受任者が行い、本人は必要な額だけ通帳から現金を受け取るという方法があります。
反対に通帳や印鑑などの管理だけを任せ、必要に応じて返還してもらうという方法も有るかもしれません。
不動産については、特に収益物件をお持ちの方は、管理が難しいという場合に委託するケースがほとんどです。
財産委託契約を進めていく前提で、財産調査を行い、ご自分の財産が現時点でいくらあるのかを把握することができます。
財産管理委託契約は、下記の任意後見契約と合わせて行うこともあります。
ご自分の判断能力に問題ない場合や多少低下してした場合には財産管理委託契約で十分だけれど、さらに判断能力が低下した場合には後見を開始するという内容です。
2-4.任意後見契約
まず、任意後見制度とは、本人に判断能力があるときに、あらかじめ、将来ご本人が認知症などで判断能力が不十分な状態になったときに、本人の代理人となるべき者(任意後見人)とその代理人の権限の範囲(後見事務の内容)を契約より定めておき、将来ご本人の判断能力が不十分な状態になったときにその契約の効力を発生させて、自分が選んだ代理人(任意後見人)に自分が委託した後見事務を行ってもらうという制度です。
家庭裁判所に対して行う、法定後見制度との違いですが、法定後見制度が後見人の選任自体を家庭裁判所に申し立てる、後見人の代理権は包括的で事務内容も被後見人の財産を保護するものに限定されることに対して、任意後見制度は、ご本人が信用できる者を選任することができ、事務内容もご本人の希望に沿って決めることができます。
2-5.遺言書作成
遺言書とは、財産を所有している人が、自分の死後に財産をどのように分けるのかという意思を示した書面のことを言います。
遺言書の作成もホームロイヤー契約の1つです。
ご自分の死後、ご自分の財産を誰に取得させるかを自由に決めることができる制度です。
詳細は、当サイトの遺言書に関するコラムをご参照ください。
2-6.死後事務委任契約
死後事務委任契約とは、委任者が受任者に自己の死後の事務を生前に依頼する契約です。
死後事務委任契約は、主に①葬儀に関する事務②行政機関への届け出など③生活に関する手続となります。
死後の事務の具体例ですが、親族などへの連絡、葬儀の手続、墓の管理や永代供養、賃貸なら住居の明け渡し、医療機関や施設への費用の精算などです。
死後事務委任契約は、血縁関係のある方と疎遠であったり、いらっしゃらない場合に第三者に任せる必要がある方からのニーズが特にあります。
ご本人から頼まれたために上記の手続きをしようとしたものの、ご本人の意思確認が取れないという理由で手続きが進まなかったという事例も有りますので、必ず契約書の作成を行ってください。
2-7.ご家族からのご相談
ご本人との法律相談に限らず、一定の範囲のご親族(例えば配偶者など近しい方)も対象とする契約です。
ご本人に関することであることから、ご本人をよく知る弁護士に相談したいという方もいらっしゃるので、そのための契約です。
ただし、ご本人と利害が対立するような相談などは受けることができないことにご注意ください。
3.弁護士とホームロイヤー契約を締結するメリット
3-1.法律の専門家である弁護士から法的助言を受けられる
近年では、インターネット上には法律に関する記事がたくさんあります。
しかし、それがご自分の求めている内容かどうか、それが正しいかということを確かめる術はなかなかありません。
情報があふれている時代だからこそ、弁護士に直接助言を受ける方が適しています。
弁護士とホームロイヤー契約を締結する一番のメリットは、やはり、法律の専門家として正しくあなたにふさわしい助言を的確にできることだと思います。
3-2.いつも同じ弁護士に継続的に相談に乗ってもらえる
市役所の相談や弁護士会、法テラスの法律相談は毎回弁護士が変わります。
この場合、毎回同じことを一から説明する必要があります。
しかも、相談時間は30分が多く、ほとんど相談できなかったという方も少なくありません。
ホームロイヤー契約を締結することで毎回同じ弁護士に相談することができます。
万一、ホームロイヤー契約を締結している弁護士とは違う弁護士にしたいという場合には、再度、希望する弁護士との間でホームロイヤー契約を締結すればよいのです。
3-3.弁護士がご本人の生活状況や健康状態を把握することができ、将来万一の時に備えることができる
ご本人にとってもご家族にとっても安心できるところだと思います。
特に見守り契約は定期的にご本人と連絡を取り、連絡が取れない場合や取れていても様子がおかしい場合にはすぐにご本人宅に駆け付けるなどの対応をすることができます。
そして、判断能力が不十分な状態であれば、後見開始、お亡くなりになっている場合には遺言執行や死後事務委任契約に基づく手続きを行うなど適切な対応を取ります。
3-4.自分の希望通りの契約内容にすることができる
財産管理委託契約や死後事務委任契約などそれぞれの事情に合わせて契約内容を決める必要がありますが、市販の定型文では不十分なことが多くあります。
弁護士との間のホームロイヤー契約では、できるだけご自分の希望に沿う内容にしたり、ご自分が思いつかなかった必要な事項を追記するなど、オリジナルの契約内容にすることが可能です。
特に任意後見契約は、法定後見とは違い、ご自分の判断能力が不十分になった際には、あらかじめ、事務内容を自由に決めることができます。
3-5.予めご自分の任意後見人としてふさわしいか知ることができる
任意後見をお考えの方は、当該弁護士がご自分にとってふさわしいかをすぐに判断することは難しいかもしれません。
このような場合に、あらかじめ、見守り契約や法律相談などで弁護士の能力や人となりを把握することができ、信頼に足りるかを判断することができます。
4. ホームロイヤー契約を行うときの注意点
4-1.ご自分に適している手段であるか
例えば、既に判断能力が低下している状態の方が、自分は見守り契約で十分だと考えて、必要な手続きを取らないという場合です。
この場合、見守り契約ではなく、後見申し立てなどが必要です。
他にも、葬儀などの具体的な手続きの委託を遺言でできると考えている場合や、反対に何もしなくとも同居している知人に遺産が移ると誤解して事後事務委任契約だけ行うという場合です。
ご自分に適切な手段を選ばなければ、かえってご自分や周りの人に不利益となる場合があります。
4-2.内容がご自分の希望に沿ったものか
弁護士以外の方と契約する場合、本当にご自分の意に沿う内容になっているかご確認ください。
例えば任意後見契約の内容が、不当に後見人の利益になっている場合、事務内容が不明確、不十分であることも少なくありません。
4-3.ご家族の協力が必要な場合に理解をもらっているか
同居のご家族がいる場合、弁護士だけでは十分な活動ができず、同居のご家族のご協力が必要な場合があります。
例えば、財産管理委託契約をする場合、これまで管理していた家族から不信感を持たれることも考えられますし、後見契約をする場合も、ご家族から見て当該弁護士が後見人としてふさわしいとは思えないと感じる場合も有ります。
このような場合、相談の際にご家族も同席するなど一定の配慮が必要になる場合があります。
4-4.契約時点で判断能力があるか
ホームロイヤー契約は、あなたに判断能力が十分あることが前提となっています。
ホームロイヤー契約ではなく、後見申し立てがふさわしい場合や、見守り契約はご家族との間で行う必要がある場合などがあります。
5.ホームロイヤー契約を締結してよかった事例
5-1.親の異変にすぐに気づくことができた
親御さんのことが心配でお子さんとの間で見守り契約を締結したケースです。
お子さんは、離れて暮らす親御さんのことが心配で、弁護士との間で見守り契約を締結し、2週間に1回連絡を取るという内容にしました。
弁護士が定期的に連絡を取ろうとしたところ、電話には出ることができたのですが、会話が噛み合っていなかったため、弁護士が直接親御さんのところに伺いました。
親御さんの過去の病気が悪化して、かなり危ない状態であることが分かりました。
急ぎ、親御さんを病院に連れていくことで事なきを得たという事例です。
5-2.詐欺事件に巻き込まれずに済んだ
Aさんは、弁護士との間でホームロイヤー契約の一つである財産管理委託契約を締結していました。
Aさんのところに、突如警察を語る人物から電話が来て、示談金を支払えば逮捕を取り下げるという内容でした。
Aさんは慌てて弁護士のところに、示談金が必要だから管理してもらっている預貯金からお金をおろしてほしいと言いました。
弁護士は、詐欺であるとすぐに気づき、Aさんに説明し、Aさんも納得したため、詐欺グループにお金をだまし取られずに済みました。
もし、Aさんが財産管理委託契約を締結していなければ、慌ててAさんの預金を下ろして、詐欺グループにお金をだまし取られていたかもしれません。
5-3.後見人として素早く対応してもらえた
Bさんは、もし自分が認知症になったときに先祖からの不動産などの管理ができなくなってしまったらどうしようかと悩んでいました。
法定後見制度では、不動産の運用などは対象外であると聞いており、不安を感じていました。
そこで、別件で依頼した弁護士に悩みを相談したところ、任意後見契約をしてはどうかという提案をもらいました。
Bさんはその弁護士のことを信用していましたので、その弁護士を任意後見人とする任意後見契約を締結しました。
Bさんはしばらくは元気でしたが、転倒して骨折をしたことで入院し、認知症が急激に進んでしまいました。そのことをご家族から聞いた弁護士は急ぎ、家庭裁判所に任意後見監督人の選任の申し立てをし、後見を開始しました。
Bさんの土地は、後見人となった弁護士などにより無事に管理運用することができました。
5-4.自分の死後、自分の財産を渡せる安心ができた
Cさんには、隣に住む夫婦に大変お世話になっていました。
Cさんは独り身で唯一の相続人は兄弟のDさんだけで、Dさんとは10年以上連絡を取っていませんでした。
Cさんは自分の財産をDさんではなく隣の夫婦に贈りたいと思いました。
そこで、弁護士に相談して、遺言を作成することでCさんが万一死亡した場合には、お隣の夫婦に遺贈できるようになりました。
5-5.葬儀などを予め任せることができた
Eさんは、一般的な葬儀とは少し異なる葬儀にしてほしいと生前からずっと言い続けていました。
ただ、Eさん家族は必要ないと言って、Eさんの希望を聞いてくれるとはとても思えませんでした。
そこで、Eさんとの考えに共感してくれる同居のFさんと死後事務委任契約を締結しました。
Eさんの死亡後、Fさんは死後事務委任契約に基づいてEさんの希望通りの葬儀を行うことができました。
6.まとめ
以上より、ホームロイヤー契約と言っても、内容は様々ですので、あなたにとって最も適している内容の契約にすることがとても大事です。